こんにちは。弟のひでです。
みなさま、江川達也というマンガ家をご存知でしょうか?
愛知教育大学を卒業後、中学校の数学講師を経て、コミックモーニングで「BE FREE!」でデビュー。代表作には、少年ジャンプに連載された「まじかる☆タルるーとくん」や、ビッグコミックスピリッツに連載された「東京大学物語」などを持つ方でございます。
最近は、テレビにも積極的に出演したり、アダルトビデオの監督を務めたりと、本業のマンガ以外の分野でも、精力的に活躍しております。
また、最近の彼は活字の本も精力的に執筆しております。内容は、現在の社会システムに苦言を呈するというものなのですが、これが、正直ヒドイ。
最近発売された、『江川達也の本物の授業 「東京大学」にダマされるな!』(PHP)という本が、あまりにもツッコミどころ満載なので、今週の裏オキラクページで採り上げてみました。いやあ、電車の中で読んでいて、座席から転げ落ちそうになるくらいひっくり返りましたよ。
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■ひでのお気楽レビュー
『「東京大学」にダマされるな!』にダマされるな!
この『「東京大学」にダマされるな!』の内容を簡単にまとめてみると、
現在の社会は、東大を頂点とする学歴社会に問題がある。学力というたった一つの価値基準に、無理やり自分を当てはめるように生きてきた日本人たちは、個性も殺され、未知の問題に対処できないようになってしまった。だから、これから幸せになるためには、偏差値や学歴に頼ろうとせず、自分を信じて好きなことをやるしかない。そのためには、自分の頭で考え、判断できる本物の実力が必要だ。
ということでしょうか。
そして、漫画、戦争、歴史、日本語、国家、教育、仕事のことなどを江川流にバッサリと切り捨てております。
たとえば、江川達也は、手塚治虫と宮崎駿をあんまり評価していなくて、水木しげるを大絶賛しております。手塚治虫と宮崎駿は、アメリカが喜ぶ日本を描き続けているところが嫌いで、自分の興味があるものだけを、世間の評判に関係なく、ひたすら描き続けている水木しげるこそが、真の漫画家なのだとか。
また、フリーターでもニートでも別にいいではないか。好きなことをやる続けていられるのだから、という主張や、北朝鮮の核の脅威から日本を守るには、地下都市にするのが一番だ。なんて主張もしております。随分過激な主張ですね。
このように、単行本が合計で2000万部も売り上げた、『東京大学物語』の作者が東大を象徴とする日本のシステムを、バッサリと切り捨てるのですから、それなりに読み応えがあるものだと思いますよね。私も、ちょっとそう思っていました。
ただし、それは論理的であればこそ。
この本は、はっきり言ってトンデモ本です。それは、ちっとも論理的ではないからです。
例えば、江川達也の高校時代のエピソード。
一方で人間には、一つの問題をじっくり考え、自分で解き方を見つけ出そうとするタイプの人間もいる。学生時代の僕がまさにそうだった。・・・(中略)・・・ところがいざ試験となると、「自分で一から考える派」は、何も考えずただ解き方を覚えてきたやつにどうしても勝てない。教師も教師で、僕が悪戦苦闘して導き出した解答を、褒めるどころか解き方が汚いと嫌味を言う始末だ。社会に出たらどちらの能力がものをいうかは、火を見るより明らかだというのに。ともかく僕のような能力を持った人間を評価するコードが、いまの受験システムにはないのだから、東大には本当の意味で思考できる人間などいないと断言できる。(18ページ)
まあ、これはこれでいいでしょう。
漫画家として成功した江川達也は、ある時からアシスタントを雇うことをやめてしまいました。現在連載中の作品は、すべて自分ひとりで仕上げているのだとか。その理由として、こういう風に述べています。
彼らはプライドだけは妙に高く、こちらの指示にいちいち文句をつけてきたり、ひどいやつになると僕にダメ出しをしたりするのだ。いくつもヒットを飛ばし、十分以上に実績のある僕に、まだ自分の作品すらないアシスタントが、なぜ自分の意見のほうが正しいと思えるのか、僕は不思議でならなかった。(25ページ)
江川先生、高校時代のあなたが評価されなかったのは、このアシスタントさんみたいだったからとは思わなかったのですか?こういうのを一冊の本の中で並べるのは、ちょっとどうかと。
もっとひどいのは、このエピソード。現在江川達也は、「源氏物語」の漫画版を連載中なのですが。
僕の『源氏物語』くらい正確で、なおかつ原文の味わいを損なっていない作品もほかにないのではなかろうか。
理由もちゃんとある。それは漫画だからだ。
文章というのは流れだから、多少辻褄が合わなくたって読むほうは勢いで読み進めることができる。でも漫画というのはそうはいかない。描き手がちゃんと細部まで理解していないと画が描けないのだ。(122ページ)
うわあ、この人、この本の存在意義を否定したよ。だって、この本文章で描かれてるじゃん。何よりも、『源氏物語』だって文章で表現されているのだから、『源氏物語』の原典まで否定していることになりますよ。
というようなお茶目な部分がこの本にはいっぱい詰まっているのですよ。
フリーライターの永江朗は、著作「<不良>のための文章術」の中で、新聞の読者投稿欄によくある「ゴミを捨てるのは良くない」とか「老人に席を譲ろう」という文章は、「わが新聞はこういうつまらない普通の人が読んでいます。読者の皆様、どうぞご安心ください」というサインであって、お金をもらうための文章であるならば、「ゴミを捨てれば、ゴミを拾う人の仕事が増えるのだから、どんどんゴミを捨てよう」だとか「老人を鍛えるために、席を譲るのはやめよう」ぐらいのことを書かなければダメだと言っています。
確かに、評論家は現代社会をバッサリと切る文章を書いて、お金を稼いでいるわけですから、どんなに現実離れした過激な主張でも、一応読む価値はあるのでしょう。
ただしそれは、筆者の終始一貫した主張が、感じられる文章であればこそであって、江川達也のこの本のように、筆者の主張にブレや矛盾が感じられる場合は、どんなに素晴らしい主張でも、非常に浅薄なものに感じられてしまいます。そして、筆者の考えの背景にも疑問を抱いてしまうのです。
江川達也は、「サラリーマン金太郎」で有名な本宮ひろ志のアシスタント時代に、「エロは売れる」と刷り込まれて、徹底的にエロを詰め込んだ「BE FREE!」でデビューしました。それ以降も彼の作品には、徹底的な売れる要素が詰め込まれています。ただし、物語が進んでいざテーマを描こうというあたりになると、作品が崩壊してしまうのも、彼の漫画には良く見られることです。
この本も、きっとそういう計算の元に生まれていますよね。
頭の中で思いついた過激なことを言っておけば、きっと本が売れるだろうという姿勢が、そこかしこに見られてしまうのが、私はとても嫌でした。たとえ本人にその気はなくとも、筋道が通っていないから、どうしてもそう思ってしまうのですね。
そうそう、この本もきちんとエロの要素がありましたよ。
本の最後は、小学校3年生の娘と一緒に風呂に入って、お前の弟や妹はここに入っているんだぞと、素晴らしい性教育しているエピソードでした。次は「ゴムを付けろよ」と教えるのだそうです。
すごいな、PHP。よくこんなラストを許したものだ。
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■今週の間違い大杉
ひでがお送りする、前回お気楽164号の素の間違いを自ら告白し、白日の元にさらけ出してしまうコーナー。それが、「今週の間違い大杉」
ということで、今週もお楽しみくださいませ。
◆もしちょっとした好きを狙って、勝手にパソコンの中身を盗み見られたりしたら・・・。きゃ、怖い。
素の間違いは「好きを狙って」。正しくは「隙を狙って」。
確かに、他人のパソコンの中身をのぞくのが、「好き」な方もいらっしゃいますからねえ。
◆こんな便利なソフトをタダで使わせてくださるんですから、太っ腹な言い方ですね。
素の間違いは「太っ腹な言い方」。正しくは「太っ腹な良い方」。
「太っ腹な言い方」っていうのは、どんなのでしょうかねえ。「この店にあるドンペリを全部開けてくれ!」っていう感じでしょうか。一回言ってみたいなあ。
◆やっぱりビールなのかいっ!と、自分で自分で突っ込みを入れておきました。
素の間違いは「自分で自分で」。正しくは「自分に自分で」。
そんなに自分をアピールしないでも、ねえ。
では、今週も。
どうも申し分けございませんでした。
さて、みなさま。お気楽165号を読んで、お気楽な気持ちになれましたか?
もしなれたのならば、私たちにとって、それが何よりの幸せでございます。
今週もきっと素の間違いはなくならないと思いますが、それもこのメルマガの味でいっ!!ということで、どうかご勘弁を。
どうか、一人でも多くのみなさまが、NGワード見つけていただけますよう祈りを込めて・・・。。
それでは、また来週!!
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てなことで、最後までお付き合いくださってありがとうございました。
今週もあなたにとって、素敵な1週間でありますように。
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